コピーの不思議Q&A|Ricoh Japan


コピーの不思議Q&A


「不思議だなぁ...」と思うことが、科学する心の第一歩です。みんなが毎日便利に使っている機械の内側には、そんな不思議の秘密がぎっしり詰まっています。「キッズのためのQ&A」では、タカハシ博士とコーラ隊長が、皆さんから寄せられたコピー機、プリンター、ファックスについての質問にお答えします。なぜだろう?不思議だなぁ!と思ったら、ここをクリックしてメールで質問を送ってください。


コピー機の構造に関する質問コピー機の構造に関する質問

得能 岳くんからの質問:

「 ファックスはどうなっていますか?」

説明にあたり、文字や絵をまとめて「画像」ということにしますので、画像といったら文字や絵のことと思ってくださいね。

ファックスは遠くに画像を送ることができなければなりませんね。 たとえば横浜の会社から鹿児島にある会社に画像を送る、といったことができなければなりません。 どうやって送っているのでしょう?

「遠くに送る」ということでは、電話も同じです。 電話を使えば、遠くにいる人と話ができますね。 「画像」の代わりに「声」を送っているわけです。 どうやって「声」を送っているのでしょう?

まず、電話について少しお話しします。

電話は「声を電気の信号に変える装置」を使い、実際の声ではなく、電気の信号を電話回線(電線)に流して送ります。 受け取る方では、受け取った「電気の信号を声に戻す装置」を使い、声として聞き取っています。 この方法は電話回線という「電線」を通して行われますので、有線方式といっています。

電話は、電話回線という電線を使い、電話局を介して行われます

携帯電話などは電話の線につながっていませんね。 携帯電話の場合は声を電気信号に変え、この電気信号を電波にのせて、「電波信号として」空中に送信しています。 この電波信号を通信衛星やアンテナが受け取り、ふたたび電波信号の形で送り出します。 その電波信号を別の携帯電話が受信すると(受け取ると)、電波信号から声の電気信号を取り出して、声に戻す装置を使い、声として聞き取っています。

こちらの方法は電線がありませんので、無線方式と呼ばれています。

携帯電話などは、電気信号を電波に乗せて通信衛星やアンテナを介して行われます

まず皆さんがよく知っている電話について説明しましたが、ファックスが行っていることも電話と似ています。

ファックスの送り手側では「画像」を電気信号に変えて、有線方式なら電話と同じ電話回線(電線)を使って相手側に送ります。 無線方式なら、携帯電話と同じように「画像」の電気信号を電波に乗せて空中に送信し、アンテナや通信衛星を経由して相手のファックスに送り、受け取った電波信号から「画像」の電気信号を取り出して画像を作り、ファックスとして紙などに出力しています。

それでは、どのように画像を電気信号に変えているのでしょうか? また、受け取った電気信号から、どのようにして画像を作っているのでしょうか?

これらについて説明していきます。

●「画像」を電気信号に変える方法

円を描いた原稿を、横に10マス縦に9マスで分割します今、右のような原稿があったとします。 この原稿を横方向に10、縦方向に9に分割します。 横1列を「行」といい、上から1行目、2行目と呼ぶことにします。



マス目の中に絵があれば1、無ければ0とします細かく分けた部分に原稿の画像が少しでもあるところは「1」、無いところは「0」とします。そうすると1行目は「0000000000」というデータになりますね。 同じように、2行目は「0011111100」に、3行目は「0011001100」になります。



0のところでは電流を流さず、1のところでは電流を流すようにしますこのデータから「0」のところは電流を流さず、「1」のところは電流を流すようにします。 これが「画像」を電気の信号に変えたものになります。 そうすると、1行目、2行目、3行目の「画像」の電気信号は、次のようになります。



以上が「画像」を電気信号に変える方法の例です。

● 画像を電気信号に変えるスキャナーについて

「画像」を電気信号に変える作業は、「スキャナー」という装置で行います。

実際のスキャナーを例に説明すると、原稿の縦横を0.042mmという非常に狭い間隔の領域に分けて画像を読み取り、電気信号に変えるものがあります。 これはどのくらい細かいかというと、原稿のサイズがA4(横297mm×縦210mm)だとすると、横方向は7,071に、縦方向は5,000に分割して読み取っていることになります。 縦方向のサイズ=210mm÷5000行=1行の幅0.042mmということになります。

下にスキャナーの絵をのせました。 これはコピー機についているスキャナーです。

スキャナー断面図

スキャナーは、原稿台においた原稿の端から順番に照明ランプの光を当て、反射して返ってきた光を鏡で送り、レンズを通して「CCD」という光を感じるセンサーに映していきます。

CCDには1列に7,400個ものセンサーが並んでいて、映し出された画像を行ごとに1行目から最後の行まで順番に読み取っていくことになります。

CCDは映し出された画像の明るさの大小を読み取って画像の「あり/なし」を判断します。

読み取った明るさが決められた明るさより明るい時は「画像がない=0」と判断します。 明るさが決められた明るさより暗い時は「画像がある=1」と判断します。 このような方法で画像のデータを作り、電気信号に変えていきます。

電気信号は電話回線を使って遠くに届けます。 電話回線の無いところでは、電気信号を電波にのせて、通信衛星やアンテナを経由して遠くに届けます。

それでは、この電気信号を受け取った受信機側では、どのようにして紙の上に画像として出力しているのか、見てみましょう。

● 電気の信号を画像にもどす方法

原稿をマス目上に分割し、画像のあるところを1、ないところを0とした1の部分を黒く塗りつぶします原稿を分割して画像の「ないところを0」、「あるところを1」としました。 今、「1」のところを黒く塗ると、右のように原稿の画像にもどすことができます。



細かく分割すると、より滑らかな画像をつくることができますですが、元の原稿と比べるとずいぶんゴツゴツしていますね。 これは分割をもっと細かくしてやれば、原稿に近い画像にもどすことができます。 右の絵は分割数を増やし、縦を18行に、横を20列に増やした場合です。 少しは滑らかになりましたが、まだゴツゴツしています。



先ほど述べたように、コピー機についているスキャナーは、実際には縦方向を5,000行に、横方向を7,010列に分割しています。 これくらい細かく分割して画像にもどしてやると、原稿とほとんど同じ画像を得ることができます。

ここで大切なことは、画像がある1のところを塗りつぶすと元の画像にもどすことができる、という仕組みです。

では実際にはどのように行っているか説明していきます。

ここからは画像を作る部分ですので、皆さんが「コピー機になってみよう!」で行ったのと同じ手順を行います。

まず、もう一度繰り返しになりますが基本的なことを説明しながら、どのようにして画像にもどすのか見ていきましょう。

● ファックスを送る側

原稿をマス目上に分割し、画像のある部分を1とし、ない部分を0としますファックスを送る側では、右のように原稿を分割して画像を読み取り、画像の「あるところは1」、「ないところは0」としました。



1と0を電流のある無しに変えて電気信号にしますそして右のような電気信号(電流のあり/なし)に変え、電話回線を使って相手側に電気信号の形で送ります。


● ファックスを受ける側

ファックスを受け取る側でどのようなことをしているかを説明する前に、基本的なことをまず説明します。

感光紙に静電気をのせ、画像のない0のマス目では静電気を消し、画像のある1の部分では静電気を残します感光紙に静電気をのせて、原稿を分割した形と同じにして「画像のない0」に相当する場所は静電気を消し、「画像のある1」に相当する場所には静電気を残すようにします。 すると、次の図の右の絵のような形に静電気が残ります。



静電気が残っている1のマス目部分にトナーをつけますそして静電気が残った場所に、トナー(黒い粉のインク)をつけてやれば、右の絵のようになりますね。



これを紙に移して、熱を加えてトナーを融かし、紙にしっかりくっつけてやれば、ファックスの画像が得られることになります。これが基本的なやり方です。

このような画像にもどすやり方は、他にも色々あります。 静電気を使わず、液体のインク粒子を直接、紙に飛ばして画像を描き出す方法もあります。 この場合は「画像のある1」に相当する場所を狙って、インク粒子を飛ばすことになります。

一般のお家にあるファックスは、この液体インクを使っている場合がほとんどで、これをインクジェット方式と呼んでいます。

以下は静電気を使う方式です。 会社などで多く使われている方式で、画像を作るスピードが速いのが特徴です (この方式は実はコピー機だけでなく、ファックスにもプリンターにも使われています。 だからコピー機はファックスになったり、パソコンとつないでプリンターとして使ったりできるのです)。

原稿と同じ形の静電気像を残すのには、レーザー光を点滅させますそれでは、ファックスが画像の電気信号を受け取って紙に画像として出力する方法を説明しますが、これはコピー機がコピーを作る方法と基本的に同じです。 右の絵のような形に静電気を残すために、レーザーを使っています。



レーザーは光を細くして、小さな光の点にすることができますので、光の筆として使います。 「画像の無い0」の場所に対しては、このレーザーを点灯させて光を照射し、静電気を消します。 反対に「画像のある1」の場所にはレーザーを消して光を当てないようにして静電気を残し、感光紙に上の右の絵のような形に静電気を残します (感光紙は暗いところでは静電気を貯めておくことができますが、光が当たると静電気が消えてしまう性質があります)。

ファックスでは、電話回線から送られて来る電気信号が、このようにレーザーを点灯させたり消したりするようになっています。

実際にどのようにしているかを、絵にしてみました。

皆さんが実験で使った感光紙は紙のようなシートでしたが、実際は下の絵のように円筒状の形をしていて、コピー機の中で回転しています。 これを感光体と呼びます。 この感光体の周りに静電気をのせる装置やトナーをつける装置、紙にトナーを移す装置やクリーニングする装置が配置されています。

電気信号の通りにレーザー光が点滅し、ポリゴンミラーがその光を感光体に反射させます

レーザーは、高速に回転している六角形の形をしたポリゴンミラーによって反射され、感光体に届きます。 このレーザーはポリゴンミラーの回転にともなって、感光体の端から端まで移動して(走査されて)、原稿の一行目の画像情報が書き込まれます。 ポリゴンミラーの次の鏡の面で、同様にして原稿の二行目の情報が書き込まれます。 ポリゴンミラーには6つの面があるので、1回転で6行が書き込まれることになります。

感光体にできた静電気の像に、トナーをのせますこうして右の絵のような静電気の像を作り、ここにトナーをつけて紙に移してやると、送られてきたファックスの電気信号から画像を作り出すことができるのです。



以上、大変長くなりましたが、ファックスの仕組みの概要を説明しました。

以上で、得能さんの質問に対する回答といたしますが、小学生の皆さんにとっては大変難しい内容です。 わかりやすく回答できればいいのですが、難しい回答でごめんなさい。 ですが、なんとなく感じをつかんでいただければ嬉しいです。