コピーの不思議Q&A|Ricoh Japan


コピーの不思議Q&A


「不思議だなぁ...」と思うことが、科学する心の第一歩です。みんなが毎日便利に使っている機械の内側には、そんな不思議の秘密がぎっしり詰まっています。「キッズのためのQ&A」では、タカハシ博士とコーラ隊長が、皆さんから寄せられたコピー機、プリンター、ファックスについての質問にお答えします。なぜだろう?不思議だなぁ!と思ったら、ここをクリックしてメールで質問を送ってください。


コピーの仕組みに関する質問 コピーの仕組みに関する質問

渡邉礼登くんからの質問:

「コピー機のヒーターを分解した時はそれほど熱くなかったけど、
スイッチを入れたら急に熱くなって スイッチを切れば急に冷めますか?」

「コピー機のヒーター」といわれるものは、「定着部」だけでなく「紙を送り出す装置」にも備わっている場合があります。そして、それぞれ異なる役割をもっています。

「定着部のヒーターの役割」

定着部のヒーターは粉のインク(トナー)を熱で溶かし、紙にしっかりつけるという役割を持っています。ですから、コピー機にとってなくてはならない部品です。実際のコピー機では「熱」と共に「圧力」も加えていて、しっかりとくっつけることができます。

「紙を送り出す装置のヒーターの役割」

紙を送り出す装置についているヒーターは、紙を貯えている場所を暖めて湿気を帯びないようにする役割があります。湿気のせいで静電気が発生しにくかったり逃げていってしまったりするからです。雨が多い時期は特に湿気を帯びやすく、きれいにコピーが作れない場合があります。静電気がなくてはコピーを作り出すことができませんから、この場合もヒーターが必要になります。

以上のように、ヒータは2箇所で設置され、異なる役目を果たしていました。渡邉さんの質問には、代表的な方の「定着部のヒーター」を説明しながらお答えします。

「定着部に使われているヒーターについて」

定着ローラーで熱と圧力を受け、トナーは紙にしっかり定着します右の図では、トナーが載った状態の紙が左側から運ばれています。定着部で熱と圧力を受けたトナーは、そこで融けて潰され紙にしっかり定着します。



定着ローラーの内部に、赤外線ヒーターが配置されています使用しているヒーターは赤外線ヒーターで、右図のように定着ローラーの中に配置されていています。電気を入れたり切ったりすることで、定着ローラー表面の温度が160℃から180℃になるようにコントロールしています。この温度コントロールは、定着ローラー表面の温度を検知しているサーミスタという温度センサーからの信号によって行われています。また、赤外線ヒーターは他に電気ストーブやこたつなどの暖房器具にも使われています。



サーミスタの温度調整による、定着ローラー表面温度のグラフこのグラフは、サーミスタによってコントロールされた定着ローラーの表面温度を表しています。この定着ローラーは、スイッチをオンにして電気を流すと10秒以内に180℃まで上昇するように作られています。一度180℃に到達したらスイッチがオフになって電気を切ります。定着ローラーの熱容量は大きいのでスイッチをオフにしてもすぐに温度は下がりませんが、紙が定着ローラーから熱を奪っていくので徐々に下がっていきます。このとき温度が160℃まで下がると、再びスイッチがオンになり180℃まで温めるようにしています。また、スイッチをオフにした状態を続けても大体10分程度は80℃以上の高い温度状態が維持されます。電熱器で沸かしたヤカンのお湯が、スイッチを切ってもしばらくの間熱いのと同じことです。ですから、スイッチを切ったからといって定着ローラーに触ると火傷をする危険があるので注意しなければいけませんね。



また、ヒーターは下図のようにフィラメントに電気を流して熱を発生させ、1秒程度の短い時間で2000℃以上の高温に達します。フィラメントの材料はタングステンという金属で、あらゆる金属の中で最も溶け出す温度(融点)が高く電気抵抗が大きいので、多くの熱を発生させ高温に達することができます。

フィラメントが高温になると光が放射されますますが、これは真っ赤に熱した鉄が光を放射して明るく見えるのと同じことです。そしてこの光こそが、物を温める働きをしています。放射された光の一部は周りを覆っているガラス管に吸収され、この表面温度は少なくとも250℃以上の高温に達します。ガラス管は熱に強い石英という材料で作られていて、大部分の光はこの石英管を通り抜けて定着ローラーの内部に当たります。そこでまた吸収されて、定着ローラーを温めるようになっています。

赤外線ヒーターのフィラメントに電気を流して高温にし、光を発生させて定着ローラーを温めます

電球は、ガラス球の中に配置されたフィラメントに電気を流して光を放射させています参考に、電球の例を紹介しておきます。
電球の役割は照明として周囲を明るくすることですね。電気を流すと定着ローラーの赤外線ヒーターと同じように、フィラメントの温度が2000℃程度の高温になって光が放射されます。フィラメントから放射される光は、ガラス球にも吸収されて温度を高くします。左の絵のように電球の上に向けて電気を流すと、ガラス球の一番上の方は200℃程度の高温になります。スイッチを切ると光はすぐに放射されなくなるので、フィラメントの温度は急激に下がりますが、ガラス球はしばらく熱い状態が続きます。うっかり触ると火傷をしてしまいますので、絶対に触らないようにしましょう。10分程度時間が経過すれば、十分温度が下がって熱はなくなっているでしょう。